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2016.02.02 (火)

日本は「にほん」か「にっぽん」か

はひふへほ2009年に日本の読み方の閣議決定が行われたことは覚えておいででしょうか。
麻生元総理は

「にっぽん」又は「にほん」という読み方については、いずれも広く通用しており、どちらか一方に統一する必要はないと考えている。

と答弁しました。
今回のお話しは「そもそもなぜ日本の読み方が2種類あるのか?」です。
日本語の歴史のちょっとした豆知識にお付き合いください。

「母には二度会ひたれど父には一度も会はず」

室町時代にまとめられた日本最初のなぞなぞ集『後奈良院御撰何曽』からの一問です。
「母だと二回会うけれど、父だと一回も会えないものなーんだ?」
この問題の答えは「くちびる」です。
平成を生きる私達には当を得ませんが、当時の人は納得がいったといいます。
それはなぜか?
「はひふへほ」と書いた文字の発音が今と違ったからです。
日本語では古くは「はひふへほ」という字を書いて「ぱぴぷぺぽ」と発音していました。
「ぱぱ には二度会いたれど ちち には一度も会わず」
確かに唇は二回触れあいます。
7世紀後半から使われるようになった「日本」という国号は、もともと「にっぽん(呉音)」や「じっぽん(漢音)」と読まれていたと推測されています。
平安時代に平仮名ができてからは、仮名は「にほん」と表されましたが発音は「にぽん」だったのでしょう。
読み方の歴史としては「にっぽん」が古いのです。

はひふへほの歴史

Nifon no cotoba to Historia uo narai xiran to fossuru fito no tameni xeua ni yavaraguetaru Feiqe no monogatari.

日本語ならびに日本の歴史の学習用に編纂された『天草版平家物語』の表紙の一節です。
読みにくいですが、

日本の言葉とHistoria(歴史)を習い知らんと欲する人の為に世話に和げたる平家の物語

と書いてあります。
注目したいのが、は行の発音です。

Nifon(日本)、fossuru(欲する)、fito(人)、Feiqe(平家)

『天草版平家物語』は宣教師のための日本語と歴史の学習本なのでポルトガル式ローマ字で書き綴られています。
読み方をカタカナで表すとこうなります。

ニフォン、フォッスル、フィト、フェイケ
※発音の仕方は下唇を前歯に軽く押し当てて出す[f]ではなく、両唇を近づけて息を摩擦させる[Φ]です。

そうです。時代がさがると「はひふへほ」の読み方は「ぱぴぷぺぽ」から「ふぁふぃふふぇふぉ」に変化していったのです。
唇の動かし方が現在の「はひふへほ」の発音に近付いていますね。
ちなみに安土桃山時代にポルトガル人が編纂した『日葡辞書』には「日本」の読み方が「にふぉん」、「にっぽん」、「じっぽん」の三通りあったことが記されています。

そして「にほん」へ

「はひふへほ」を「はひふへほ」と発音するようになったのは江戸時代のはじめの頃です。
これらの発音の変化は「唇音退化」といって、唇を使って出す音がより緩い音である摩擦音に変わって行く現象で、日本語以外にもさまざまな言語に見られます。
もしかしたら変化する過程で「近頃の若者の言葉遣いはなっとらん!」という発言をした人もいたかもしれませんね。

時代はさらに下がり1934年(昭和9年)。文部省臨時国語調査会が日本の読み方を「にっぽん」に統一しようと決議しました。
結果としては、政府で採択されず正式な決定がないまま現在に至り、2009年の日本の読み方の閣議決定に繋がります。

「にっぽん」又は「にほん」という読み方については、いずれも広く通用しており、どちらか一方に統一する必要はないと考えている。

「日本」の使い分け

国立国語研究所等が作成した『日本語話し言葉コーパス』では2004年の調査で8242回あった「日本」の内、にほん」と読んだ回数が8046回と約97.6%を占めていたことが記されています。
しかしながら、私達は通常は「日本」を「にほん」と読みながら、スポーツ観戦では「にっぽん」を叫び応援します。
力強い印象を与える「にっぽん」と、やわらかい印象の「にほん」を知らず知らず使い分けているのですね。

※『後奈良院御撰何曽』は1516年に、『天草版平家物語』は1592年に書かれたものなので「母には二度会ひたれど父には一度も会はず」の実際の発音は「ふぁわ(ふぁふぁ) には二度会いたれど ちち には一度も会わず」の方が正しいです。説明を分かりやすくするために引用いたしました。ご了承ください。

カテゴリー: 言葉

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