TOP / 言葉 2016.04.07

バイト敬語に物申す!「~になります」

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ビールバイト敬語に物申す!

ギリギリ平成生まれの内田が自分なりに思うことを書いていきたいと思います。
最初に言っておきたいことは、私はバイト敬語について目くじらを立てて「正した方が良い!」と言うつもりはない、ということです。
心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつけているだけなので「こんな考えもあるんだなあ」くらいに受け止めていただければ幸いです。

恐らく全4回です。
横道に逸れたり、パッションが暴走して筆が乗りすぎると長くなります。
何回で収まるか予想してみてください。笑

ちなみにアルバイトの語源であるArbeitはドイツ語で仕事を意味します。
アルバイトをすることはjobben(ジョベン)、仕事をすることはarbeiten(アルバイテン)。
日本とはジョブとアルバイトの意味が逆なのです!

いきなり逸れてしまった。

閑話休題。

バイト敬語とは何か?

まずはバイト敬語とは何かについて触れておきます。
デジタル大辞泉を見てみると、バイト敬語はすなわち商業敬語であることが示されています。

商業敬語
飲食店・サービス業などの従業員の使う過剰な、また、誤った敬語表現。バイト敬語。ファミリーレストランやコンビニエンスストアに多いことから、ファミコン敬語ともいう。[補説]「ご利用していただけます」「ご注文は以上でよろしかったでしょうか」「こちら、(ラーメン)のほうになります」「いらっしゃいませ、こんばんは、ようこそ」などの例がある。

つまり、バイト敬語は「敬語として使われているが、日本語としては間違った表現」なのです。
そして上記の説明で注目したい言葉が「過剰な、また、誤った敬語表現」。
デジタル大辞泉が紙の辞書であったなら、私はこの部分に黄色いラインマーカーを引き、加えて赤ペンで「過剰な」の部分をぐりぐりと丸く囲っていたことでしょう。
バイト敬語は多かれ少なかれこの「過剰な」サービス精神・礼が生んだ表現だと思うと、とたんに愛おしくなるからです。なりませんか?あれ?
兎にも角にも私はこのバイト敬語に流れる「不器用な気遣い」を勝手に感じて拾い上げていきたいと思います!

 

「~になります」は間違っているのか

「こちら、ビールになります。」

このバイト敬語は有名になりすぎてどこが間違っているのかを挙げるのは今更ですが、構わずいきます。
間違っている部分は「なります」で、正しくは

「こちら、ビールです。」
「こちら、ビールでございます。」

と言います。
「なります」は、動詞「なる」と丁寧の助動詞「ます」からできています。
そして、動詞「なる」は多くの意味を持った言葉ですが、その根っこの部分は「それまでとは違う物・違う状態に変わる」という意味です。
「こちら、ビールになります」と言ってしまうと、「今はまだビールにはなっていない」ことになってしまいます。
完成したものを提供する場合は断定表現を用いなくてはならないのですね。

逆に考えると、「~になります」と伝えた後、最終調理を客の前で行う場合は正しい表現になり得ます。
料亭などで出てくる固形燃料で仕上げる小鍋などは「~になります」という表現を使っても間違いではありません。
やったね!「なります」!

あと、個人的にはお会計時の「1,980円になります。」という表現は半分正しくて、半分間違いなのかしら、とも思います。
頭に「~と、~と、~を合計すると」という言葉が隠れているとすれば変化を表す「なる」が出ても不自然ではないからです。
「クーポンを使うと500円引きになります」だったらばっちり正しい使い方ですね。
やったね!「なります」!

「~になります」が蔓延るそもそものきっかけは?

「なります」がバイト敬語として使われ出した原因は私は2つあるのではないかと考えています。

まず一つ目は、「です・ます」「ございます」の語感がいまいちしっくりこないこと。

完全に感覚の話しなので伝えることができるかどうか不安なのですが、「こちら、ビールです。」だとどうもそっけなさを感じ、「こちら、ビールでございます。」と言うとなんだか仰々しい。
丁度よい距離感の丁寧語がないんですよね。
そこで駆り出されたのが「なります」。きっと駆り出された側の「なります」は「え?俺ここも守備しなきゃいけないの?」と当惑したことでしょうが、これが案外しっくりきた!
アルバイト用のマニュアルなんかにも載っちゃって「俺ってもしかしてできるやつ?!」とニヤニヤしていたら、「なんでお前がそこにいるんだ!与えられた仕事だけきちっとこなせばいいんだよ!」とお偉方がどなりこんできた。哀れ「なります」。バイト敬語の悲劇。すみません全部私の妄想です。

さて、この案外しっくりきちゃった「なります」の万能感が二つ目の原因です。

丁寧の度合いで言うと
「です・ます」<「なります」<「ございます」
といった具合に感じませんか?

「です・ます」より丁寧な印象を与える「なります」。
私は考えました。これを引き起こしている要因は補助動詞「なる」なのではないかと・・・!
尊敬語「お・・・になる」「ご・・・になる」は皆様よく使われていますよね。「ご購入になる」「お召し上がりになる」「お支払いになる」。
通常のビジネスシーンにおいても、過剰な尊敬表現にならず、よく聞き・よく使うフレーズです。
「なる」という音は日本語の敬語表現というお花見スポットで、結構な広さのレジャーシートを広げていたのです。
しかしながら、尊敬の補助動詞「なる」は、「お・ご」と一緒に動詞をサンドイッチする形でしか使われません。
「ビールになります」と、名詞についても尊敬の意味合いは持たないのです。

「なります」に流れる不器用な気遣い

つまるところ、「なります」は「です・ます」と「ございます」の語感がしっくりこないがために、敬語枠から音の響きで駆り出され、なんとなく今日に至っているのです。
丁寧に接客しようとした結果の産物であるとすると、ほら!愛おしい!

「なります」についてスポットを当てたので、影が薄くなってしまった「です・ます」と「ございます」ですが、正しい敬語を使おうと思ったら「『です・ます』はもっと評価されて良い」し、「『ございます』は怖くない」ということを私は伝えたい!
「こちら、ビールです。」も笑顔満天で言われると敬意が伝わるし、「こちら、ビールでございます。」もさらっと言ってしまえばさほど堅い印象は受けません。
願わくは「なります」がこれ以上叩かれず、守備範囲が広すぎて過労死しませんように!

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