TOP / 言葉 2020.12.30

「良いお年を」はいつまで言える?

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良いお年を

年末の挨拶として飛び交う「良いお年を」の声。
この言葉には使える期限があるのをご存知ですか?
今回は年末の挨拶の歴史と意味について考えます。

「良いお年」と歳神様

「良いお年を」は、「良いお年をお迎えください」の略で、年内の最後のお別れのときに言う挨拶です。
この「お年」、もともとは新年のことではなく、お正月にお迎えする「歳神様」のことを指していたんだとか。
歳神様は新しい年の穀物の実りを約束してくださる神様で、その御霊(みたま)をいただくことで一年が始まるとされていました。
昔の日本人がいつ生まれても等しくお正月に歳をとるという風習を行っていたのはこの信仰からです。
「歳神様をちゃんとお迎えして、無事に新しい御霊を授かり、ひとつ歳を重ねてください」という意味だったのです。
ちなみに年末の大掃除も歳神さまを迎え入れるための準備で、12月13日から始めて大晦日までには終わらせるものでした。
確かに大事な人をお迎えするときは気合をいれて掃除をしますよね!

「良いお年」と江戸庶民

江戸時代の庶民にとっての「良いお年を」は少し違ったニュアンスが含まれるようになりました。
物の売買の方法として「掛け売り」が一般化していたためです。
掛け売りとは、先に品物を受け取ってあとでまとめて代金を支払う買い物方法です。
購入者の身元がはっきりしていることが前提のやりとりではありますが、店はお客と代金を台帳に記録しておき、決まった日にまとめて集金するという方法が取られていました。
落語なんかで見られる「ツケといてくれ」というやつですね。

この掛け売りの集金される日は決まっていて、お盆と暮れの2回でした。
特に暮れは一年の締めくくりなので取り立てる方も本気です。
きちんと集金しないと店の運営にも関わってくるので、お正月を楽しく迎えるためにも取り立ては激しいものでした。
「掛け取り」と呼ばれる集金人と借りた側の攻防は江戸の大晦日の風物詩であったそうで、「掛取り」は冬の季語ともなっています。
もしかしたら「江戸っ子は宵越しの銭は持たない」と言う言葉も江戸っ子の気質を表すだけでなく、こういった時代背景が影響して作られた言葉なのかもしれませんね。

そういったわけで、ツケを全部払い終わって、綺麗さっぱり新年を迎えましょうという意味も込めて、江戸時代の人々は「良いお年を」と言っていたそうです。

「良いお年」を言う期間

さて、ここまで「良いお年」の歴史を紐解いてみましたが、この挨拶を言う時期に決まりはあるのでしょうか?
いつからいつまでという厳密な決まりはありませんが、一般的には12中旬から12月30日までとされています。
なぜ大晦日が含まれないのかというと、「12月31日にはすでにお正月の準備が既に整っている」とされるためです。
確かに、大晦日にお正月飾りをするのは「一夜飾り」と言って避けられますし、急ごしらえではお迎えの用意をしては歳神様に失礼です。
そのため、12月31日は「良いお年を」ではなく「来年もよろしくお願いします」と言うのが良いとされています。

そういうわけで、今年「良いお年を」を言えるのは今日が最終日。
皆様、良いお年をお迎えください!

参考:日本文化研究ブログ(「良いお年を」の続きとは?使う時期はいつからいつまで)TRANS.Biz(「良いお年を」の意味とは?後に続く言葉や別の言い方・喪中の表現)TREND RIPPELE(年の瀬の挨拶「良いお年を」の「お年」はいつのこと?)LIFULL HOME’S PRESS(大晦日の意味を知っている? 由来と歴史から学ぶ、大晦日の過ごし方)ことばのぎもん(よいお年をお迎えください~と言うのはいつからいつまでが正しいの?)北海道神社庁(Q.歳神様(としがみさま)とはどういう神様ですか?) / Japaaan magazine(江戸時代のツケ事情。掛け売りが一般的なお江戸の盆暮れは借金の取り立てが大忙し!)

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