TOP / 言葉 2018.03.26

刺身はなぜ刺身と書くのか?

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sashimi

サンリオにはKIRIMIちゃんという魚の切り身モチーフのキャラクターがいます。
主人公のきりみちゃんは鮭の切り身。
「鮭の切り身がモチーフとか正気かよ!」と思ってしまうかもしれませんが、とってもキュートなキャラクターなのです。

さてさて、切り身とは書いて字のごとく、魚の身を一人前ほどの大きさに切ったものです。
では、刺身は……? 何も刺していないのになぜ刺身なのでしょうか?

刺身の歴史

刺身は新鮮な魚介類を生のまま薄く切って、醤油やわさび、生姜などをつけて食べる料理です。
似た料理になますがありますが、なますは刺身よりも古くから食べられています。(ちなみに獣肉で作ったものは膾、魚肉で作ったものは鱠と書くことが多いです)

日本で最初に刺身の名前が文献にでてくるのが室町時代。京都吉田神社の神官であった鈴鹿家の記録である『鈴鹿家記』の応永6(1399)年6月10日条に「指身 鯉、イリ酒、ワサビ」と、その名を見つけることができます。この時は刺身ではなく、指身と表記されていたのですね。
材料のイリ酒は、漢字で煎り酒と書き、日本酒に梅干し等を入れて煮詰めたものです。
醤油が発達・普及するまでに広く用いられた液体調味料だとか。今の刺身よりもなますに近い料理だったようです。

そのうち刺身は食品を薄く切って盛り付け、食べる直前に調味料をつけて食べる料理と認識されていくようになります。室町時代後期に書かれた料理本『四条流庖丁書』にはクラゲを切ったものや、雉や山鳥の塩漬けをお湯で塩抜きして薄切りしたものまで刺身と称されています。

刺身が現代の形まで発達したのは江戸時代です。京都と違い、新鮮な魚介類が豊富に手に入る江戸で料理としての刺身が花開くのは必然だったのでしょう。
また、刺身に欠かせない醤油が大量生産できるようになったのも江戸時代中期でした。
生の魚と相性が抜群によい調味料が手軽に手に入るようになったからこそ、刺身は私たちにとって身近な料理となったのです。

なぜ刺身なのか?

さて、なぜ刺身を刺身と呼ぶのかについては残念ながら定説はありません。
由来として挙げられる3つをご紹介いたします。

一、武家社会では「切る」という語を嫌っていたため。
刺身が生まれた室町時代は武家社会です。「切る」という単語は縁起が悪いため、「切り身」ではなく「刺身」が用いられるようになったという説。

二、「刺身」の「刺す」は調理法。
「刺す」という表現は包丁で刺して、小さくすることからきているという説。

三、調理した魚の尾びれを切り身に刺して示したため。
切り身の状態では何の魚か分からないため、尾びれを刺して示していたという説。

どれも興味深い説ですね。
そういえば、刺身を表わす言葉にお造りというのがありますが、これはかつての関西で、鯛などの海の魚を切ることを「作り身」と言っていたことに由来します。作り身に接頭語をつけて「お造り」というわけです。
今では馬や牛などの肉やこんにゃくなどの加工品、たけのこなども含め、新鮮な切り身全般の呼称として「お刺身」魚の尾頭付きや船盛りのような豪華に飾られたものを「お造り」と呼ぶ傾向にあります。
余談ですが、懐石料理では刺身や酢の物は向付(むこうづけ)と呼ばれます。これはお膳の向こうに置かれることから名付けられました。
刺身の由来は分からないのに、お造りと向付の成り立ちは明確に分かっているのは面白いですね。

参考:語源由来辞典 / 世界大百科事典第2版 / 歴史の謎を探る会『江戸の食卓』(河出書房新社)

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